祖父への結婚式

病室で行った、祖父のための結婚式。

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2018年10月19日、福井県のとある病院で人前式をしました。


もともとは、来年にしようかと考えていた結婚式。


本当は、結婚式は僕と妻が仕事の関係で離れているので、

来年よりもうちょっと先かな、なんて思っていたけど、

僕の祖父の体調を考えて、せめて親族だけでもと思い、

2019年頃に式ができないか、と考えていました。


ただ、祖父の体調が思ったより良くなくて。


最近は入退院を繰り返していましたが、

いよいよ父から入った「あと数日かも」という連絡。

おそらく来年には間に合わないだろう、と。


その連絡があった夜は、気づいたら涙が止まらなくて、

あんなに泣いたのは久しぶりだった。


祖父がいなくなることは、この年頃になって覚悟はしていたけど、

想像すると、悲しくて、悲しくて、

あまりその現実が受け止められない、というのが正直な気持ちでした。


悲しい、というよりは、寂しい、という気持ちと、

どうしてもやり残したことがあったから。


それは、どうしても祖父に僕と妻の晴れ姿を見てほしい、ということ。


幼いころから人一倍かわいがってくれていたけど、

僕が大学で福井から関東に出たときからあまり会えていなくて。

実家へ帰省するたび、年齢のせいか弱っていく祖父を見ることが寂しかった。


でも、いつも嬉しそうに満面の笑みで迎えてくれて、

結婚を誰よりも喜んでくれた祖父に、

まっすぐ、恩返しがしたかったのです。


結婚の報告をしたときはとんでもなく幸せそうな顔をしてくれて、

式の予定を伝えた時も、入院して寝たきりだったけれど

「式は来年やなあ」と弱った手で僕の手を握りながら微笑んでくれていました。


その気持ちに、どうしても応えたい。


きっとこのまま祖父がいなくなったら、

僕は一生この気持ちを後悔する気しかしなかった。


そんな経緯から、思い立ったが吉日。

入院する病院で式を挙げることを決めました。


妻と話しながら思い立ってから、

祖父の体調を考えて1日でも早く挙げたくて、準備は1,2日だけ。

祖父の体調も不安定だったので、

ばたばたしながら急ピッチで準備を進めました。


ドレスも通販で即日到着のものを買って、僕の靴は父のもの。


二人の仕事柄、内容や段取り、演出、進行は僕。

アイテムや装飾などは、アートディレクターの職をしている妻。

自然と役割分担をして迎えた当日でした。


参列は、親族だけの来れる人だけで、場所は入院している病院の、ちいさな病室。

本当は、陽の当たる部屋でやりたかったけれど、

酸素マスクが外せず、病室で行うことになりました。


でも、この距離感が、結果良かった。


弟に司会をしてもらい、写真、映像、ヘアメイクとして

いつも大阪でお世話になっているクリエイターの皆様が駆けつけてくれました。

(急なご相談にも関わらず、本当に感謝してもしきれません。)


ちいさなちいさな人前式だったけれど、

幸せそうな祖父の顔が見れて、それが見れただけでも嬉しかった。


はじまる前には、「結婚式だよ」と伝えると、

振り絞った声で「着替えはあるのか?」と少し強がる返事が、祖父らしくて涙が溢れた。


耳の遠くて、目もあまり見えない祖父の耳元で、

一人ひとり来てくれた親族を紹介するところからスタート。


酸素マスクも点滴も外せなくて、
話をするだけでも精一杯な祖父だったけれど、
彼女のドレス姿をみて笑ってくれたときは本当に感無量でした。

誓いの言葉も、お互いへ、というよりは、家族と祖父に向けての内容に。

一文目から、気持ちがこみ上げて読めなかった。

それは、この場を迎えられていることが、あまりにも嬉しかったから。


「間に合って、良かった」


それが一番正直な気持ちでした。

病院で結婚式なんて、突拍子もない出来事だったけれど、

祖父のためを思ったら、無心で準備を進めていました。


誓いの言葉の後は、指輪の交換、誓いのキス、結婚誓約書、と

無事、人前式の内容を進めていきました。


誓約書には祖父のサインと指印を。

震える手で、一生懸命名前を書いてくれて、本当に嬉しかった。


最後は集合写真を撮って、結びに。


今回、突然の式だったけれど、協力してくれたクリエイターの皆様、

許可をしてくださった病院の方々、

そして何より最大限協力してくれた家族、親族の皆、

本当にありがとうございました。


これを思い立って後押ししてくれた妻に、心からの感謝を伝えたいと思います。


家族の素晴らしさ、生きることの尊さを、改めて感じた瞬間。


どうしても祖父に見せたかった結婚式ができて、

少しでも恩返しになっていれば、嬉しいな。


Tomoya Takahashi

オーダーメイドウェディングプロデューサー

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